rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

世の中の大体のことには、理由と原因がある。建築にも・・・

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世の中で行われていることには、必ず理由と原因がある。また、理由と原因があって初めて何らかのアクションがなされる。当たり前のことだが、ときどきそれらを見損なうことがある。どういう理由や原因でそのことがなされているかを考えることはとても重要である。また何かが行われている場合、その理由と原因は何かを考えることも同様である。それは、ものごとの本質を知ることでもあるからだ。とくに、現在なされている政治についても、理由と原因の視点から読み解いていくとさまざまな矛盾に気付いてくる。どこに利権が流れているかが見えてくるのだ。

 

話を大きく変えて、建築の話をしよう。建築の設計も、理由と原因によってつくられている。技術的なことはもちろんだが、空間やデザインにおいても理由と原因があって初めて豊かな空間と優れたデザインが生まれるのだ。

 

もう10年くらい前になるだろうか。自分より、10数歳若い建築家と話していた時のことである。優れた建築に共通するものは何かという話になった。自分は、常日頃から考えていることを話した。コーリン・ロウの虚の透明性(phenomenal transparency)を実現している建築だというと、即座に彼も同意してくれた。あまりこの話で一致する人と出会わなかったのでとてもうれしかったことを覚えている。虚の透明性というより、現象的透明性といった方がしっくりくる。ただ、ガラスなどの透明な材料によ透明な建築ではない。それは、複数のオブジェクトを見えざる規則によって構成することによって空間をつくり出し、空間に深みを与えデザインに豊かさを与えてくれるものである。彼とは、世界中の建築で、虚の透明性を実現しているものを上げていった。ほとんどのものについて意見が一致した。

 

優れた建築の理由と原因は、コーリン・ロウの虚の透明性(phenomenal transparency)を実現できているかどうかによる。他にも、空間やデザインを豊かにするものはあるだろうが、おそらくもっとも大きな影響を与えているものであることは確かである。