rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

建築のつくり方、微分、想像力など

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優れた建築は、最大限にシンプルな計画だが実際体感してみると複雑で味わい深い空間持っているものだと思う。世界中の名建築のほとんどはこの法則の取ってつくられている。複雑なつくりで複雑な空間をつくるという手法もないわけではないが、前者には建築的には及ばない。自分も建築を設計するときには、シンプルなプランだが複雑で豊かな空間をつくるよう常々考え続けている。

 

計画自体がシンプルだが空間は複雑で豊かであるということはどういうことだろうか。オブジェクトとヴォイドの構成自体は単純だが、それらの組み合わせが絶妙であるがゆえに複雑だが味わい深い空間を生み出すことができる。

 

逆に、複雑な計画で複雑で豊かな空間を持つ建築の計画部分をそぎ落とし、より単純化していくと考えると分かりやすいかもしれない。そこで、行われている作業は、複雑で豊かな空間を保ちながら、複雑な計画を「微分」を繰り返しながら単純化していくというものである。単純化の過程で、もとあったものが簡略化される。それによって、計画そのものに欠損感を感じさせる。その欠損感がもたらすものが、人間の「想像力」である。「想像力」が駆動されると、より空間の複雑な豊かさを感じることができ、人に豊かさを与えてくれる。優れた建築を優れていると感じられる所以はここにある。

 

こんなことを考えながら日々紙に向かい建築のスケッチを続けているのである。