rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

やっと「半島を出よ」を読み終える


忙しさと、別の本との平行読みも重なってようやっと
村上龍著の「半島を出よ」を読み終える。
とにかくおもしろい小説だった。


設定がかなり微妙である。
北朝鮮の「反乱軍」である「高麗遠征軍」の先遣隊が
福岡ドームを占拠、そのあとすぐに後続部隊が飛行機で
到着、そして福岡占領。のちに艦船で12万人の本隊が
福岡に上陸予定という設定で物語が進む。


それに対して、日本政府は福岡ドームの時点では
担当の政治家・官僚がそろわず、対応できず。
福岡占領が終了したころに政府は対応をはじめる。
そこでとられた対策は、九州封鎖というもの。
なにを守ろうとしているのかがどんどんあいまいに
なっていく。福岡ドームの時点では、少数の犠牲者で
日本を守ることができたかもしれない。九州封鎖の
意味するものは、九州を犠牲にして日本を守るのでもなく、
九州を救うためのものでもない。ただ問題を先送りして
いるだけなのだ。その間にも奇襲の失敗など意思決定・
指示系統の混乱で失策が続く。


この小説のおもしろいのは、高麗遠征軍が北朝鮮
「反乱軍」であること。そして九州占領という限定的な
占領が目的であるということだ。


いまの日本の政府からあらゆる組織にないものを
あぶりだしている。それはなんのための組織で
なにを守ろうとしているかというこということだ。
それに意思決定のしくみと指示系統の不徹底。


最終的に12万人の本隊の上陸を阻止するのは、
福岡で共同生活する社会から阻害されたアウトロー
武器や毒虫のマニアだというところも意味深い。


あまり詳しく書くとこれから読む人の興味を削いで
しまうからここまでにしよう。


とにかくいまの日本の社会についていろいろ考えさせ
られる小説である。