rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

いっしょに住宅をつくっていくということ


毎度毎度、クライアントの方や工務店の方と住宅を
いっしょになってつくっているが、いつもいつも難しい
なあと思う。


なにもかくしごとなく仕事を進めていくことができても、
伝わらないこともあるし、なにより納得しながら決めて
いくというのはなかなか大変な作業である。


何事もそうかもしれないが、すべてのことに満足できる
ものというのは、ほとんどこの世の中には存在しない。
とくに住宅においては何かを立てれば他の何かが
立たずということがかなり具体的にあらわれてくる。
それも多層的に複合的にである。その優先順位を
決めるための、それぞれのいいところわるいところ
を示す参考資料をクライアントに提示するのもわれ
われの仕事である。


でも大局を見て、これをあきらめれば他のところが
よりよくなるから、こちらを優先しようと判断する
のはけっこう難しいものだ。対話を繰り返しながら、
ほんとうにこの住宅をつくることで実現したいことに
クライアントとともに近づいていけるように努力して
いる。


住宅においては、クライアントご家族みんなが豊か
に快適に20年30年過ごすことができるものをつくる
というシンプルな目標しかない。


すべてに満足できるものはできないが、すべてに
納得できるものは必ずつくることができるはずである。


●写真は、「せめぎあう3枚の塀たちの図」である。