rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

モノつくりは死ぬまで悩み続ける


建築修行をしていたころの師匠のことを思い出す。
いつも気を張って、周囲の空気はいつもぴりぴりして
いた。彼のつくるものは美しい。そして、深い意味が
ある。建築の考え方、つくり方は直接教わったわけ
ではないが、自分なりに盗み取った。


いま、気付くと、本当に学んだのは、考え方やつくり
方ではないような気がする。モノつくりは一生悩み
続けるということだ。師匠は、毅然としながらも、常
に悩み続けていた。その悩む姿を隠すわけではなく、
背中から、深い悩みは、われわれ弟子たちに伝わって
きた。


モノはじっとしていれば、いくらでも出てくるもので
はない。四六時中悩み続けた上で出てくるのだ。一度、
モノは出来上がったらそれで終わりではない。次なる
探求が始まる。悩まなくなるということは、モノつくり
を止めるということだ。逆に、悩めなくなったら、モノ
をつくる必要はない。悩み続けることができるという
ことは、ありがたいことなのだ。


モノつくりには、永遠に正解はない。だからこそ、おも
しろい。


こんなことに、この歳になって、やっと気付いた私で
ある。


こうして、モノつくりはきょうも悩み続ける・・・。