建築の設計をしていると、神が降りてくるよう
に、諸問題が一気に解決するような感覚を
ときどき経験する。
建築を成り立たせている諸条件は、最初の
段階では混沌の中にあり、しくみやかたちは
見えていない。諸条件を解決していく中で、
だんだん、しくみやかたちが浮かび上がって
くる。そしてあるとき、一挙に問題が解けて、
建築として成立するようになる。
そのとき、建築は混沌の中から解き放たれ、
自分のあたまやからだにあった建築は、そこ
から、リリースされ、自分から遠いところに
去っていってしまう。この感覚は、基本設計
が終わるころ去来する。デザイン的な統合は
そこで完成されるのである。あとは、具体的
に建築とするために現場を見守っていくのみ
である。
モノをつくる行為とは、つくられたモノと自分が
分離されるための作業である。
そんな作業をこれからもずっと続けていくの
だろう。