rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

日本建築ツアー三日目(その2)


いい天気だ、気持ちいい。


さて、日本建築ツアーの続き。11/6(火)午後2時ごろ、
岡山県備前市を離れ、兵庫県小野市の浄土寺浄土堂
を目指す。予定よりはやく、午後3時半過ぎに現地に
到着。開館時間が11月から午後4時までとなっており、
急いで住職さんのところへ見学のお願いにいく。


浄土堂は、重源作のお堂である。屋根はそりがない
シンプルな方行屋根。正方形の平面をマンダラの
ように9分割し、真ん中の正方形を囲むように、4本
の柱が立つ。その内側に西を背に3体の観音様が
聳え立っている。柱は、ゴシックの柱のように何本か
に分かれて、空と地平線に向かう。水平性がゴシック
と異なるところである。バロック的でもあり、日本的
でもある。なんともいえない不思議な建築だ。マンダラ
プランであるが故、観音様の後ろにも回りこむこと
ができる。珍しい平面である。観音様の後ろには、
西側前面にスリット上の開口部がある。夕陽が差し
込むときは後光となり、なんともいえない美しさだと
いう。また、南手間側にも開口部があり、そこから
導かれる光は、観音様の顔に陰影を与える。こんな
すさましい日本建築を今まで見たことがない。恐る
べし、重源。プランと空間の不一致という側面でいうと、
伊東豊雄氏設計の多摩美術大学の図書館に通ずる
ものがあるかもしれない。いまひとつ、管理が行き
届いていないところがもの悲しい。


いずれにせよ、この浄土堂のように、シンプルなプラン
や構成で、複雑な味わいのある建築をつくっていき
たいと思う。


静かな感動を胸に秘め、帰途に着くため伊丹空港
目指す。予定時間よりも早く到着してしまったため、
出発まで2時間くらい待ち時間がある。スタッフたちと、
空港のレストランで、つまみになるようなものを頼み、
生ビール2杯とウイスキーオンザロック1杯を飲み、
ほろ酔い気分で飛行機に乗り込み東京に戻ってくる。


このような貴重な機会を与えてくださった栄港建設、
荒木毅建築事務所のみなさんに感謝したい。