rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

建築はほほえむ


「建築はほほえむ」松山巌著(西田書店)という
本を読む。まえまえから、本屋で装丁が気になって
いた本である。読んでみると、これまた、名著で
びっくり。すんなりとこころの中に内容が入って
くる。


自然、まち、と建築の関係がこれほどポエティック
にしかもわかりやすく書かれている本を知らない。


また、建築家の行為は見えざる次元を対象にして
いるということ、建築家は自らは決してやらない
職業のための建築をあたかも自分が使うかのよう
に設計していること、など、建築家の職能を的確に
表現している。


つぎに、タイルの目地の存在理由から、ものともの
の継ぎ目に言及し、さらにその考え方は、すきまに
至る。建築のデザインは、この継ぎ目やすきまに
よって成り立ち、これらは部分と全体を統合する
ものだと述べる。おそらく、すきまという概念が、
空間というより上位の概念につながっていくことを
暗示する。


本書は、建築をこれから学ぶ人のために書かれた
入門書であるとしているが、いま建築をデザインして
いて、方向性を見失っている人、壁にぶち当たって
いる人、などが、建築を設計する人間として、その
立ち位置を再確認するためにも有効な本でもある。


たまたまだが、また、いい本に出合うことができた。