ときどき、住宅を設計をしていて、ふと、エライ
ことに関わっているなと我に帰ることがある。
人が一生に一度しか建てない住宅の設計を
請け負っているのだ。なんと、重い責任を
負っていることか。
住宅の設計の場合、依頼主の家族の様々な
プライベートなことを知らないと計画できない。
また、これからのご家族の生活を支える器を
つくるわけだから、見えないことを依頼主と
ともに見つけ出していかなければいけない。
一時的だけど運命共同体である。精神的な
ことから、日々の具体的なこと、未来への
希望、などなど、多種多様なコミットメントが
不可欠である。
これほど依頼主に関わる職業はそう多くない
だろう。
依頼主に深く関わるという意味でいうと、精神
科医や弁護士などがあるだろうか。いずれも
建築家と異なるところは、状態が悪化して
しまったものを修復し、元に近い状態に戻す
のが主な仕事だということができるだろうか。
その点、建築家の仕事は、未来の希望をつくる
ハッピー産業である点では少し救われるような
気がする。
日々、忙しく設計をしていると、こんなことも
ついつい忘れそうになってしまうが、いつも肝に
銘じて設計しなければならない。ときどき、こう
して意識的に認識しなおす努力をするように
している。
●写真は、日野市の敷地の見に行く途中の
クレソンが生えている沢で獲物を追っている鴨
である。こんな近くで鴨を見るのは、はじめて
である。