rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

敷地の不思議


たしか去年だっただろうか、近所の材木屋
さんが店をたたみ、ついに材木置き場が解体
された。


建物が建っていると、大きく見えたがいざ
壊されてみると意外と小さく見える。また、
建築が始まり、基礎の段階に入ると、比較
対象が明確になるので少し広く感じるように
なる。上棟して、柱の間から周囲の建物や
景色が見えている状態ではまた小さくなって
しまったような印象になる。そして、壁が
貼られ比較するものがなくなるとだんだん
広く感じるようになってくる。完成して、窓を
通しての、比較対象ではなく、外とのつな
がりを感じられるようになったとき、もっとも
広く感じられる空間になる。


いままであった建物が解体されてなくなる
と、これまで見えなかったものが急に目の
前に現れてくる。まるで都市の断面を切り
取ったような感じだ。そして、以前そこに
なにがあったかという記憶は腐食され、滓
のように堆積していく。


敷地は、このように状況によってさまざまな
次元で移ろっていくものなのである。