コンセプトという言葉は、とかく敬遠されがち
である。その理由は、建築の使い手とかけ
離れた建築家の独りよがりな難解なものだ
と思われているからなのだろう。
本来、コンセプトは、敷地状況と依頼主の
要望を読み取った上で、どんな建築にして
いくかを抽象的にした、依頼主と建築家の
共通認識事項のようなものである。
建築家からすれば、依頼主にどんな建築
をつくっていくかという方向性を示すもので、
依頼主からすれば、建築家の思いを理解
するための道具である。
もちろん、諸条件が複雑だとコンセプトも
難解なものになることもある。しかし、それ
でも依頼主に理解してもらえるものでなけ
ればならない。
最終的に出来上がる建築空間は、おそらく
建築家本人二しか理解できないもので伝え
ようがないものである。でも、建築家はでき
る限り、どんなものをいっしょにつくろうと
しているのか、どんなものができるのかを
依頼主に伝える努力をしなければいけない
と思う。
それを示すのが、コンセプトというものであり、
方向性を依頼主と建築家で共通認識する
には不可欠なものなのである。
いま求められるのは、建築家の独りよがりの
コンセプトではなく、共通認識のための道具
としてのコンセプトである。