rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

コンセプトの役割


コンセプトという言葉は、とかく敬遠されがち
である。その理由は、建築の使い手とかけ
離れた建築家の独りよがりな難解なものだ
と思われているからなのだろう。


本来、コンセプトは、敷地状況と依頼主の
要望を読み取った上で、どんな建築にして
いくかを抽象的にした、依頼主と建築家の
共通認識事項のようなものである。


建築家からすれば、依頼主にどんな建築
をつくっていくかという方向性を示すもので、
依頼主からすれば、建築家の思いを理解
するための道具である。


もちろん、諸条件が複雑だとコンセプトも
難解なものになることもある。しかし、それ
でも依頼主に理解してもらえるものでなけ
ればならない。


最終的に出来上がる建築空間は、おそらく
建築家本人二しか理解できないもので伝え
ようがないものである。でも、建築家はでき
る限り、どんなものをいっしょにつくろうと
しているのか、どんなものができるのかを
依頼主に伝える努力をしなければいけない
と思う。


それを示すのが、コンセプトというものであり、
方向性を依頼主と建築家で共通認識する
には不可欠なものなのである。


いま求められるのは、建築家の独りよがりの
コンセプトではなく、共通認識のための道具
としてのコンセプトである。