去年の椿昇作品との出会いは、思い違いからのできごと
だった。別の舞台美術家をイメージしてチケットを買ったところ、
全く別人だったことにあとで気づいたが、せっかく買った
のだからみるだけ観てみようと世田谷パブリックシアターに
でかけたのであった。
そのパフォーマンスは「イデビアンクルー」というダンス
パフォーマンスグループによるもので、その舞台美術を椿昇が
担当していた。舞台はのっけからこちら側のノックダウンで
はじまった。
舞台前面の床から天井まで、はしからはしまで、透明ビニールに
一面だけ白のフェイクファーが張ってある1.5mキューブが
積み重ねてあった。そのキューブが突然崩れて客席に倒れてくる
ところから舞台は始まったのだ。各場面の舞台美術もいかしていた。
そんなこんなで、水戸芸術館で「国連少年展」という椿昇展があると
聞きつけ、展覧会のためだけに水戸に行った。ほとんどの出品作品が
面白かったが、中でも、5mくらい高さのあるテディベアの口に
ベルトコンベアを通して不発弾を送りテディベアに不発弾処理を
してもらうというものがもっもとも可笑しく大笑いしてしまった。
もちろん、ちゃんとした社会的メッセージは真摯に受け止めるとして、
ユーモアというオブラートが楽しめるのだ。
そこで、写真だが、事務所の梁に鎮座するバッタである。
これは椿昇が横浜ビエンナーレで半円形のコンチネンタルホテルの
くぼみ部分に巨大バッタをくっつけるというプロジェクトがあったが、
その小型版レプリカである。
椿昇は、アーチストとして独立して仕事をはじめるまえは、高校教師
だった。そのことも関係があるのではないかと思うのだが、仕事の中で
一貫して見えるのは関係者と「対話」しながらデザインを進めていると
いうことだ。そのあたりに彼の仕事の抽象性を強化しユーモアを
生み出す源があるような気がする。