rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

弱点は状況によっては強みになる


中学のある部活の先生が、「器用なヤツはうまく
ならない。不器用だけど、きらりと輝くものを持った
ヤツが伸びる。」といったようなことを話していた。


私は、おもちゃ屋の子供に生まれ、小学生頃から、
両親が外出するときは、必ず店番をやらされた。
これがとても苦手で、客を相手にする仕事には
つけないとその頃からずっと思い続けていた。


そんなことで、建築のデザインなら、事務所に
こもって、一人静かにもくもくと図面を描いて
いればいいから、自分に向いた仕事だと思い、
大学受験も、修行も、ただただ建築のデザインの
修行に打ち込んできた。ところが、独立してみる
と、住宅の仕事が多く、クライアントとの対話は
もとより、工務店の現場監督さん、職人さんなど、
コミュニケートしなければいけないことが多いこと
多いこと・・・。振り返ってみると、金額も張るし、
究極の客商売をしている自分に気付き、あるとき
ぎょっとしたことがある。商売がいやでこの世界に
飛び込んだのに、こんなことになるなんて・・・。


私には、いわゆる世間一般にいわれる「営業力」
はない。でも、クライアントや工務店の人など
とは、できるだけ正直に、隠し事なく、透明性を
もって、深い次元で、付き合おうと意識して日々
過ごしている。このことが、うわべだけの「営業力」
では成しえない、違う次元での力を発揮している
のかもしれない。


デザインにしても、自分に、ずば抜けた才能がある
とは思っていない。だからこそ、自分にないものに
ついては、常に意識的である。意識的であること
こそが、弱点を強みに変える触媒となっているの
だろう。


このように、世の中には状況によっては、弱点が
強みになることがしばしばある。