子供のころから、ポストに郵便物を投函するとき
に、いつも不思議な感覚を体験していた。
ポスト口に郵便物を投函した瞬間に、自分の
ものだったものが、いったん公のものになり、
配達されると受取った相手のものになる。投函
するときに、個のものが個からリリースされる
のである。ほんとうにポストに入ったのだろうか、
届くのだろうかという不安も手伝って、不思議
な感覚を得ていたのだろう。
こうしたあるものの支配からリリースされる
ものはたくさんある。建築の設計が終わった
とき、完成して引き渡したときも同じような感覚
に襲われる。アーティストが作品を完成させた
とき、小説家が小説を書き終えたとき、音楽家
が作曲し終わったときなども、同じ感覚なの
だろう。
おそらく、「死」も同じようなものなのではないか
と思っている。脳が考える「意識」によって、自分
が自分であると思っていたものがその自分から
リリースされることではないだろうか。個から、
宇宙へ・・・。
それゆえ、死の個から宇宙へリリースされる
恐怖から、人を救済するために宗教が生まれる。
ある宗教は、死を迎えるときに神によって救済
されると説き、あるものは、無に戻ると説く。後者
は、生きていても死んでいても宇宙は変わら
ないよと人を諭す。
なぜだか分からないが、郵便ポストを見ていた
ら、こんなことを考えてしまった。