rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

煮物力


ふだん、料理をつくるときは、イタリアンや中華
など素早くつくることのできる料理を好む。


でも、つらいことがあったとき、煮詰まっている
ときは、時間をかけて煮物をつくることが多い。
不思議と気が落ち着くからだ。


肉、人参、玉葱、大根、馬鈴薯、などをとりあえ
ず、切り刻み鍋にぶち込んで煮込んでみる。
このときは、まだ最終的になにをつくるか決め
ないでとにかく煮込む。


数時間経って、材料がだんだん柔らかくなって
きたところで、ほとんど思いつきで、カレーにする
か、ビーフシチュー、クリームシチュー、ただの
トマトスープにするかを決める。


なぜ、煮物をつくると気が休まるのだろう。


なにをつくるか目的を決めないで、ただただ鍋の
中にカオスをつくり出す。


日常仕事をしているときは、意識を集中して、
なるべく効率よく、ものごとがスムースに進む
よう心がける。カオスとは無縁のところで思考
している。一杯一杯になると、心の半分では、
カオスや無意識を望む気持ちがムクムクと湧き
上がってくる。でもそれらを仕事に持ち込むと、
たちまち仕事はクラッシュしてしまう。


カオス、無意識、無目的など、仕事ではやって
はいけないことを、鍋の中で時間をかけて実行
することが、一種のカタルシスをもたらしている
のだろうか。


煮物が完成する頃、心は落ち着き、思考は整理
されてくる。みなさんも、煮詰まったときに煮物を
つくってみてはいかがでしょうか。


ある方から、煮物力って面白いじゃないですか、
その題名で本でも書いたらどうですかと言われた
ことに触発されてこんなことを書いてみた。