子供のころから、自分の気持ちが浮付いて
どこにもつながっていない感じ、つまり
リアルを感じることができない状況が長い
間続いていた。学校時代、建築事務所に
勤めてからも同じ気持ちになることがよく
あった。
なぜそうだったか、自分で仕事をはじめて
から少し経ってその理由が分かった。自分
がだれかになにを伝えたいのか、そのこと
を本当に自分のあたまで考え、からだを
通して出てきたものなのか、そして、相手
に自分が伝えたいことが伝わったか。その
あたりのことがまったく整理されていなか
ったからだった。
まず自分がなにをどう考えて生きていくか
をクリアにしなければならない。そして、
そのことをとことん考え抜き、自分のからだ
を通して外に出てくるものになるまで熟成
させなければいけない。そこまですれば、
上滑りの考えとはまったく違い、少しだけ
かもしれないが聞く人の心に響くようになる。
それを聞いた相手から、自分が考えたこと
に沿った答えが返ってくることによって
はじめて本当のコミュニケーションが生じ
るのだ。
リアルのつかまえ方、それは相手と深い
コミュニケーションを交わすことによって
可能になる。関係のリアル、もののリアル
は、実は人間関係のリアルによってもたら
されるのだ。