rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

創造的解体あるいは希望的破壊


建築のデザインは、創造的解体あるいは希望的破壊の
繰り返しによって練られていく。


もちろん、住宅の設計では、クライアントの要望は
基本的には大前提となる。クライアントの要望を
表層的にしかとらえきれない場合、間取りレベルの
対応しかできない。というか、間取りレベルの
コミュニケーションしかできない。クライアントの
建築家とのコミュニケーションのための共通ツールは、
最初の時点では、間取り(プラン)のみである。そこ
からどう抜け出すかが、より深いコミュニケーションを
可能にさせる。


クライアントの要望を、無意識レベルでキャッチし、
それを空間レベルで解決すること、これが「建築家」
という職能が存在するとしたら、建築家であるか
ないかはその能力で分別される。


クライアントの要望は、様々なレベルで受け止め、
蓄積していく。


一方で、建築的なデザイン作業は、クライアントの
要望を頭の片隅に置きながらもパラレルに進んでいく。
一つのプロジェクトで最低3〜5案の案を考える。
その案ごとにテーマやコンセプトが微妙に変化していく。
建築のデザインレベルでは、前の案を発展させるのでは
なく、異なる文脈で考え直さなければいけない。つまり、
以前考えていたことをいったん頭の中から消し去り、
振出から新しい案を考える。


こうして、建築のデザインは、創造的解体と希望的破壊に
よって進化していく。


クライアントの要望とは一見パラレルなデザイン作業を
行うことによって、クライアントの表層的にしか見えな
かった要望を見えざる糸でつなぎ、深層レベルまで
掘り起こし、無意識に望んでいたものを現実の建築空間に
変えていくことができるのである。


建築家は日々こんなことを繰り返し続けている。