rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

微分と積分、そして建築

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微分積分」。いわずと知れた数学用語である。これらを文系的な意味で使いながら、建築をデザインしている。

 

例えば住宅の場合、クライアントからの要望は彼らがこれから長い将来暮らしていくという文脈でつくられたストーリーのようなものである。いわば、こうありたいという思い込みのようなものでつくられていることが多い。

 

まずは、この要望を「微分」してバラバラにしてみる。バラバラになったものにクライアントの系数とは違う系数で今度は「積分」してみる。この作業を打合せの中で何度か繰り返していくと、建築家もクライアントも本当に望まれているものは何かを見つけていくことができる。

 

建築を設計するとき、クライアントの要望を満たすことを前提に、豊かな建築空間をつくらなければいけない。この作業は、要望と建築空間という位相の異なるものを同時にまとめ上げていく作業である。これは「積分」的作業であるといえる。基本設計の中で、7~8案提案していく中でこの積分を繰り返していく。案が出そろったら、全体を見渡し、数案の折衷案を考えることもある。これは計画の「積分」である。

 

基本設計で方向性が見えてきたら、さらに計画案を整えていく。ある場合は、「微分」を繰り返してより良い部分を研ぎ澄まし抽象性のある空間にしていく。建築家が目指す空間は、単純な計画であるにもかかわらず複雑で味わい深い空間を生み出すことである。

 

またある時は、複数の空間要素が断片的に存在しているときは、それらの諸要素を統合し関係付けて「積分」することでシンプルで味わい深い空間をつくり出す。

 

このように、建築家は「微分積分」を多用して、シンプルでありながら豊かな空間を生み出し続けているのである。

 

写真は、よく本を読みに行く経堂の駅前の商業複合施設の屋上から見た西側に見える富士山。180度振り返ると東側に東京スカイツリーが見える。富士山と東京スカイツリーを結んだ線上にこの商業複合施設はある。不思議である・・・。