rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

批判的現実主義


いまの自分の、社会への、そして建築への姿勢
である。


独立したのは、22年前、28歳の時である。その
ころは、学校で学んできたもの全てを建築に
したいと考えていた。反体制的理想主義的な
思考。とにかく、やりたいことがたくさんあった。


独善的であるがために、建て主さんとも工務店
とも、当然うまくいかない。身の回りにはいつも
対立の構図が合った。


前にも書いたことがあるが、35歳ごろこの考えを
捨てた。捨てたといっても目指す方向は変えてい
ない。アプローチの仕方を変えたのである。まず
は、現実を受け入れてみようと・・・。


自分たちのまわりには、さまざまな現実がある。
経済、社会システム、制度、法律、慣習、既成
概念・・・。


それらをいったん受け入れてみること。そのよう
に社会との接し方を変えてみたのだ。受け入れて
みると、深く観察していけばいくほど、おもしろい
ものがたくさん見えてくる。対立していたから見い
出せなかった方法も見つかってくる。他者との
対話も成立し、よりよい関係を築くこともできる。


現実は、ただなにも考えずに受け入れても意味が
ない。それならやめた方がいい。深く観察し、根っこ
にある原理のようなものを見つけるまで頑張って
みる。そうすると、これまで対立するものだと思って
いたことが、実はそうではなく、両方の力を合わせ
てよりおもしろいものになることもある。とにかく、
批判的な視点をもって現実を受け入れることだ。


建築でいうと、建て主さんとも工務店とも目的を
一致させながら、よりエキサイティングなものを
つくることができるようになった。


それが批判的現実主義である。