rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

不安定なパラダイムの海の上で


小熊英二対談集「対話の回路」を読み進めている。
国家から個人までのそれぞれ対峙する「境界」をめぐる対談集だ。
ナショナリズムに関する話が主題であるが、個人のスタンスにも
大きくかかわる問題として語られている。
とくに、最後の喫茶店の店主でもある今沢裕さんとの対談は興味深い。
店主とスタッフのやり取りから世の中のしくみが見えてくる。


写真は、1995年、岡田斗司夫著の「ぼくたちの洗脳社会」だが、
明治維新以降続いている日本の古いシステムは、現在の社会状況と
大きく乖離してしまっていること、さまざまなひずみはパラダイム
シフトしつつあることに起因していると述べる。
岡田は、新しい中世的世界を夢想する。


明治維新の富国強兵、戦後の高度経済成長と国民は倣え右で国家の
先導のもとに従っていれば、生活は何とかなったし、何かを考え抜いて
行動する必要もなかった。


しかし今の国民には、右に倣えする右がない。
不安定なパラダイムの海に投げ出されたままだ。
人は自分の頭で考え行動するしか指針は見出すことはできない。
となると、国家から個人に至るまでの、輪郭(境界)を認識することが
非常に重要になってくる。


こういった意味で、小熊英二の仕事は個人の生き方から国家のあり方
まで,様々な輪郭を垣間見させる。それゆえ私の専門分野である
建築の設計に至るまで、とても意味深い示唆を与えてくれる。