rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

後継者:意思を引継ぎ伝えていく人


最近、工務店のひとといろいろお話する機会が多い。
その中でショッキングな話が二つある。


ひとつはバブル後の10年は、現場監督も職人も空白の時代だということ。
そういわれてまわりを見渡すと、30代の現場監督も職人もその数の少ないこと。
その10年間、工務店が新規に採用しなかった結果だという。
この空白は、建築業界に暗い影を落とし続けているような気がしてならない。


もうひとつは、職人の後継者が激減しているらしいということ。
現場監督は、その10年の後採用が再開されたので30才前のいい監督が
育ち始めているのは実感として感じる。
しかし、大工、鉄骨業者などは軒並み高年齢化が進んでいるとのこと。
木造も鉄骨造もこれから建て続けていかなければいけないものである。
関係できる範囲でできる限り存続に協力していきたいと考えている。


その具体的なアクションとして、優秀な工務店のひとたちを数社集めて
何かできることはないかと、とある工務店の専務から頼まれて
工務店ミーティング」なる集まりをはじめた。
小規模な工務店が集まってできること。
まだ一回しか集まっていないが、結構できることはありそうだ。
先日参加してもらった工務店は、RCが得意なところ、木造中心のところ、
古民家再生をしているところ、監督中心の会社、大工中心の会社、など
それぞれが別々の特徴を持っているところだった。
自分のところでできない構造をJVでやってみる、RCに関する多能工
協力して育てる、下請け業者の紹介・育成、監督の工務店間の体験留学、
などなどいろいろな意見が出てきた。


小規模な工務店は、今まで横でつながることはほとんどなかったそうだ。
横でつながることで形成できるネットワークがいくつかできはじめ、さらに
関係性を持ち始めると、そこから、偶然性、意外性、創発性がもたらされ、
面白い展開が期待できそうだ。


ところで、自分のところのことだが、うちのスタッフには毎度毎度、
自分の頭で考えて行動しろといい続けている。
できれば、将来は自立した建築家になってもらいたいと思うが、
たとえ、他の職業につくことになったとしても、今必要なのは、
自分の頭で考えて、意見を述べ、対話し、行動することだ。
これがうちの事務所の後継者(意思を引継ぎ伝えていく人)に対する
考え方だ。


●写真は、竣工パーティーのときにクライアントからもらったヒトデ型の
青竹踏み(?、変なの・・・)。デスクの下に置き、踏みながら仕事を
している。