rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

神は空間に宿る


修行時代の事務所では、空間構成からディテールまで
統一したデザインがなされ、「神は細部に宿る」という
ミースのことばは、デザイン作業をするときはいつも
反芻しながら設計にいそしんでいた。


それに反して、今は、コストのきびしい建築の設計が
多く、ディテールにとことん凝ることは予算的に無理と
いうところで設計している。


独立当初は、全体から細部まできっちりデザインしないと
「建築」にならないと思い込んで設計していたため、
予算が合わない中、使いたいディテールをあきらめなければ
ならないことが多く、精神的につらい状態が続いていた。


コストのきびしい設計では、サッシなどディテールにとって
重要な部分は既製品を使わざるを得ない。
ディテール以前の問題である。


ある時期から考え方を切り替えた。
敷地から引き出せる豊かな空間だけはきっちり実現する。
このことを目標に設計していくことに決めたのだ。
気持ちを切り替えてからわかったことがあった。
空間構造がしっかりしていればディテールの脆弱さは
ある程度消える。空間構造を壊さない、予算的範囲内で
最大限効果のあるディテールを考えていけばいいのだ。


もちろん私だって、空間構造からディテールまでデザイン
できるときは、細部に神が宿る建築を設計する。


でも私は言いたい、「神は空間に宿る」と。