rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

「しくみ」と「制度」


下北沢のとある喫茶店で出している冊子がおもしろい。
お店に来る客を見ていて、おもしろい人を見つけ出し、
そのひとと店主の今沢裕さんが対談するという形式で冊子がつくられている。


そのなかの「秘密の喫茶店」は、小熊英二さんとの対談だ。
私なりにそこから読み取ったことは、「しくみ」と「制度」についてだ。


今沢さんのことばがおもしろい。
彼とスタッフとの関係。
「スタッフにやってもらたいことをちゃんと話すと5分くらいはかかるが、
ひとことで指示を出すと、そのとたんにことばが制度化されてしまう。
マニュアルのようにやることを細分化していくとスタッフを規制するだけでなく、
自らも規定されてしまう。
そうなってしまうと、スタッフにやる気があるかどうかで決まってしまう。
なにかを拘束するものではないような、関わりなりセッションが終った後でも
覚えていられるような共通の体験があると判っていく。
でもそうすると、完全なカオスが出現してくる。
関係は、魔法だ。魔法路魔法使いはセットになっている。
魔法だけでは独立できない。」(筆者要約)


これは、組織をまとめたり、事務所を運営したりするときに必ずおこる問題だ。


「しくみ」はダイナミズムを内包している関係性だ。
それをマニュアル化等でフィックスさせようとすると制度化が生じ、
しくみそのものもダイナミズムを失い硬直化する。
それが、「制度」というものだ。


ではどうすればよいか。
小熊さんはこのように言われている。
「世界を整理する言葉を全然つくらないとカオスになる。
絶対の言葉をつくるとそれに拘束される。
だから、絶対のもではなく仮のマニュアルをつくっておいて、
いつでも変更可能にしておく。」と。(筆者要約)


「しくみ」のもつダイナミズム(関係という魔法)を残しながら、
フィックスされない変更可能な仮の「制度」をつくり
組織を動かしていけばいいのか・・・。


この問題は奥が深い。
なぜなら、世界中のあらゆる組織に共通する問題だからだ。