rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

解体現場から保存を考える


近くの解体現場である。解体しているところを見る
ことなく更地になっていると、とくに注目していない
建物だったりすると、なにが建っていたか再イメージ
するのは結構難しい。


人が、あまりまちを見ていないことの証明である。
われわれのような建築の専門家でさえこの有様で
ある。


ここで建物の保存について考えてみたい。どう
いう建物が建っていたかということを覚えている
ことは大切なことだろうか。おそらくそうでは
ない。その周辺がどのような雰囲気の空間だった
かの方が重要なのではないか。


おそらく、急激なまちの風景の変化は、人間の
精神を混乱させるだろう。急激ではなく遅い変化、
場の雰囲気を残しながら変化していくことが
必要なのだろう。


有名な建築の保存問題にはふたつの側面がある。
ひとつは建築そのものの価値が高いがゆえの保存。
もうひとつは、そのエリアの場の雰囲気づくりに
重要な役割を果たしていたという理由による保存。


どちらにせよ、まちの雰囲気を継承していくことは
とても必要なことのように思う。