rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

人々の想像力を喚起すること

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大学時代の卒業制作、大学院時代の「2大戦間のイタリア合理主義建築の研究」という修士論文を書いたときに考えていたことの根底には、建築を通して人々の想像力をいかに喚起するかということがあった。当時の藤井博巳研究室の研究テーマは、フランス現代思想構造主義記号論をベースにしていたから、さまざまな問題は想像力の問題に通ずるとしていた。当時の他の研究対象には、フランス啓蒙期の建築の研究、ピクチャレスク建築の研究などがあった。大学、大学院時代は人生の中で最も勉強をした時期だった。独立して設計活動を始めてからも根底には想像力の問題が常に念頭にあった。

 

建築を通して人々の想像力を喚起するとはどういうことだろうか。建築をかたちづくっているものには、オブジェクトの構成、ボイドの組合せ、素材感などがある。これらのものの組合せで人々の想像力を呼び起こそうというのである。たとえば、内部空間が吹抜や中庭を通じて外部空間と豊かに通ずることによって、一年一日を通して変化する光や風を感じることで豊かな外部環境を想像することができる。そうすることによって、生活そのものや家族の関係性が豊かになることを促す可能性が高くなる。絵画や文学や音楽にも同じような側面がある。建築も含めてアート系のものにはこうした人々の想像力を喚起することによって、人や家族や社会を豊かにするという使命を帯びている。

 

これまでこんなことを考えて建築をつくってきた。これからも根底にはこうした考えをもって建築をつくっていこうと考えている。