rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

植田正治の写真


植田正治の写真が好きだ。
郷里が同じという理由も少しあるが、写真の中ではいちばん好んで見る。


演出写真というカテゴリーらしいが、鳥取の地元で近所の人たちを
撮った写真はかなり興味深い。
地方で知り合いでもある人を撮っているにもかかわらず、
絵が抽象的なのだ。


抽象的といえば、薄っぺらで軽い感じがするが、単純にそうでもない。
抽象的に撮っているがゆえに、逆に被写体の実存性が
浮かび上がってくるのだ。
おばさんやおじさんの日常がイメージとして見えてくる。


植田は、その他にひとやものの影を多く撮っている。
そこでも、ちょっとしたユーモアを交え、背景をイメージさせる。
静物を撮っても同じだ。


一番有名なのは、菊池武夫の依頼で撮った砂丘モードだろうか。
ここではマグリットを髣髴とさせる絵で見るものを魅了させる。
このシリーズに限らず、一貫してシュールリアリズムの影響を
読み取ることができる。


デザインに行き詰ったとき、植田正治の写真集を見る。
抽象性から浮かび上がってくる、ユーモアと実存。
私もこんな建築をつくりたい。


●余談だが、植田正治の実家は履物製造業だったとか。
荒木経維の実家も履物屋だったと思うけど、写真家と履物屋に関係あり?