rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

オープンであり、リアルであること


30代後半くらいから、ものごとをクリアにしない建築業界
のあり方がいやで、建築の設計行為をできる限りオープン
にすること、同時に不利なこと隠蔽するブラックボックス
をなくしていくことを心がけてきた。


何でもそうかもしれないが、建築をつくる行為の目的は、
おそらくひとつに集約される。建主が将来にわたって、
建築を快適にハッピーに使い続けていくことである。
これに向かって、施工者と設計者とともに、ものごとを
オープンにして、知恵と力を出し合っていけば、なんの
問題もないはずだ。参加する者のだれかが、なにか
不利なことを隠しブラックボックスを抱えた途端、関係は
一変する。ブラックボックスを持つものには、ブラック
ボックスを持ってしか対抗できない。つまり、参加者
全員が疑心暗鬼になり、うまくいくはずだったことも、
わるい方向に転じていく。


また、設計者同士で新しいプロジェクトを立ち上げる
ようなとき、いつも発せられる発言に、「こんないい
イデアなんだから、特許を取らなければ」という意見
がある。毎度毎度、私はこの発言に辟易し続けてきた。
まだ、成功したわけでもないのにそんな無駄なエネルギー
は使いたくない。それに建築に関わるアイデアは、できる
だけ関係者に共有されていた方が建築そのものも豊かに
なる。建築意匠に関わる特許申請が一時期流行ったが、
大量生産品でもないのに、ナンセンスである。世の中
には、こんな無駄な特許や著作権というものによって
閉ざされていることが多すぎる。


ちょっと前に、梅田望夫氏と平野啓一郎氏の対談本
ウェブ人間論」(新潮社)、と梅田氏のそれに先立つ
著作「ウェブ進化論」を読んだ。「ぼくたちの洗脳社会」
岡田斗司夫著(朝日文庫)以来の名著である。彼らが
語っているのは、ウェブ上でのオープンソース、グーグル
などによる個別のコンピュータの「あちら側」からの世界
の再編成についてだが、「こちら側」のリアルな世界
でも、ウェブにリンクして世界自体が変わろうとしている。
「あちら側」と「こちら側」の双方が影響し合い、リアルに
世の中がよりよい方向に展開していってほしい。これらの
著書を読み進むうちに、自分が考え実行していることが、
ウェブ上の出来事とリンクしていることに気付く。最終的
には、リアルな世界でのオープンで豊かな社会が実現
されていくこと重要である。


世の中をハッピーにしていこうという強い意志のベクトル
を持ち、似たような方向性を持つ人たちと様々な分野・
レベルでつながり、できる限りリアルにものごとを具体化
していくことを実行し続けていこう。


これらも、「ちくわハウス」岡村泰之著(出版社:ラトルズ)
に書いている。宣伝である・・・。