rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

五感について


建築をデザインするとき、五感が十全であること
をごく当たり前に前提としている。疑うべきこと
かもしれない。


確かに建築は五感で感じるものである。しかし、
すべての人がそれらを駆使できるとも限らない
し、それぞれの感覚がときとして鋭敏でないこと
もある。


十数年前、三浦半島の火力発電所近くの海で
スキンダイビングをしたことがあった。海水は
まるで味噌汁の如く30cm先も見えない状況で
あった。そうした視覚が遮断されている状態で
潜ると上下の感覚を簡単に消失した。今までに
ない強い恐怖感を感じた。外界に対する自分の
感覚のほとんどを視覚情報に頼っていることを
再認識した。


また、おととし、両耳の調子が悪くなり、音が
聞こえにくくなったことがあった。このときも
世界から遮断されている孤立感を感じた。


このように何かの感覚が機能しないと、一気に
世界とのつながりを喪失するように思われる。


五感のすべてが十全でないことをも想定した
建築を考える必要を感じている。五感という
より人間の存在そのもので感じる建築・・・。


まだまだ、道は遠い・・・。