抽象というと、なんだか難しくて敬遠され
るものの代名詞のようになっている。
実は、このことばは人間の自由を意味
しているのだ。近代以前、人々は封建
社会によって階級に縛り付けられていた。
芸術や文学なども、貴族のものであり
一般市民は目にすることもできず、その
意味も特権的な人たちのみにしか理解
できないものであった。
近代革命によって、より市民に開かれた
芸術表現として「抽象」が発明された。
具体的なものは、一方的な意味づけに
よって特権的な意味されるものしか指示
することができない。一方、抽象は、具体
が微分されたもので、人々のだれにでも
開かれた表現方法として位置付けられた
のだ。
ことばも、視点を変えれば抽象である。
誰にでも分かる、誰にでも伝わる、抽象
であることばによって、人間はコミュニ
ケートする。
抽象的手段によって文化は築かれてきた
ともいうことができる。
抽象は難しいと敬遠することなく、その
意味をよく理解して、人間同士のコミュニ
ケーションを深め、よりハッピーな社会を
つくっていけたらと思う。
