rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

ユーモアについて


私は、建築においてもアートや音楽でも
抽象性を獲得しているものが好みである。
建築のお師匠さんもそんな方で、いまも
建築を考えるときはデザインの過程の中
で抽象性を獲得できるよう日々努力して
いる。


抽象的な作品は、大抵のものが生真面目
過ぎる傾向がある。ただそれだけのもの
は好きになれない。抽象性の中にも隙が
あったり、ちょっとした不整合があった
りするものの法を好む。たとえば写真家
植田正治さん。モード写真といわれる
ように抽象的な写真を撮られた方だ。でも
そこには、田舎のおっちゃんたちの日々
のおもしろおかしい生活が垣間見えたり、
被写体となにかと重ね合わされたり、フッ
と笑いが出てしまうような素敵な隙がある。
抽象性の中から出てくる隙や不整合という
ものがユーモアの本質なのかもしれない。


写真は、冬に越後湯沢にスキーに行った
ときに寄った駅の中にある「ぽんしゅ館」。
500円で新潟のお酒がお猪口で5杯飲める
という仕掛け。銭湯の靴入れのロッカーの
ようなところにお猪口を置きコインを入れ
るとお酒が注がれる。何十種類のお酒が
あっただろうか。100種類はあったと思う。
ただ瓶が置いてあってお酒が飲めるの
ではなく、コインとロッカーとそのメカニズム
が笑える。大手広告代理店が関わって
いると思われるが、かなり秀逸な施設で
ある。


こんなユーモアこそが人の心を動かし、
世の中の流れを変えるのではないかと
思う。


いつも、こうしたユーモアを追い続けて
建築をデザインしている。