拡散的還元主義、かなり矛盾した言葉である。
還元主義は、あらゆる現象を一つの原理に
集約し、純化していく方法である。若い時期
には誰もがその純粋さに惹かれる。実際、私
も35歳歳前まではその考え方の虜になり、逆
に主義によってがんじがらめになっていた。
おそらく、還元主義は一つのものに還元する
からいけないのだ。大げさにいえば、原理的
なものは、人の数ほどあるともいえる。なら
ば、建築をつくっていく中で、還元されるべき
場所をそれぞれの依頼主の原理と捉えると、
なんの矛盾もなく空間造形を還元していくこと
ができる。
人の数ほど還元していくことができる。その
結果、現象的にはそれぞれの依頼主らしい
建築となる。抽象的作業を通しているので
シンプルだが、深みのある建築となる。
35歳ごろ、自分の中でそんな大転換をして、
現在に至っている。
世の中は、数え切れないシステムで動いて
いる。だから、一元的なシステムでは全く対応
することができない。全体の大きな方向性は
見失ってはいけないが、一定の時期や一定の
場所で、それぞれに適したおおらかなシステム
を採用することで、全体のより豊かで深みの
ある文化環境をつくっていけるのではないか
と考えている。