rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

評価と贈与の経済学


岡田斗司夫さんと内田樹さんの対談本である。
なんとなくいつか彼らの本が出ると思っていた。
ポスト資本主義社会における新しい共同体の
かたちに関する対談である。


岡田さんが90年代に出した「僕たちの洗脳社会」
という本は秀逸であった。今読み返してもおも
しろい。岡田さん流の切り口で歴史を読み取り
直し、21世紀のパラダイムシフトについて書か
れた本である。


オタク評論家の岡田斗司夫さんと、レヴィナス
研究家で合気道家でもある内田樹さんという
取り合せがなんともおもしろい。


話は、近い未来に資本主義社会から岡田さんの
いう評価社会、内田さんのいう贈与社会に移行
するだろうというものである。話をしていく中で、
評価と贈与は一致していく。貨幣を基準として
構成されている資本主義社会は消滅して、お金
ではない気持ちやものの交換で成り立つ社会に
なると二人は話す。贈与は送られたらほかの誰か
に反対給付されることで成り立つ。そうして永久
運動となる。たとえ話にサッカーの話が出てくる。
サッカーはパスされパスするスポーツである。
絶妙なパスを出すファンタジスタは有能な贈与者
である。おのずとパスはファンタジスタに集まる。
いいパスを出せない選手にはパスがこなくなる。
サッカーは贈与社会を象徴するスポーツだと話す。


自分も建築という贈与によって、いいパスを出し
続けて行きたいと思う。とにかく、これは必読の
書である。