この前、演出家の蜷川幸雄さんがテレビでの
インタビューで話されたことばである。芝居
にノイズを取り込むために全キャストをオー
デョンで集めるということだった。
若い頃は、とにかくピュアなものを求めたが
る傾向がある。自分も全てのことについて、
特に建築においてピュアなものを追い求めて
いた。
その時感じたのは、ピュアを求めれば求め
るほど、すべてのことが一つのものに還元
されなければ気が済まなくなるということだ。
原理的一貫性がつねに求められる。これを
突き詰めれば、原理主義やファシズムに行き
着く、そんな危険性も感じていた。それにも
関わらずピュアなものを求めざるを得なか
った。
最近では、いまここにあるものを受け入れて
いかない限り、なんの変化も展開もないと
いうように考えるようになってきた。蜷川
さんがいわれるようにノイズの中にこそ今
があり、リアルがあり、おもしろさや深さが
ある。
さまざまなノイズを受け入れ、その中から
豊かなもを拾い上げ、よりおもしろい展開を
求めて生きていこう。