rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

イデオロギーとはなんだったのだろうか

東西例冷戦時代、ソ連、中国、東欧諸国は共産主義アメリカ、ヨーロッパ、日本は資本主義、ということで政治経済体制の違いで軍事的に対立していた。それぞれの政治経済体制には、イデオロギーというものがあるとされきた。文化や建築やデザインの思想もこのイデオロギーに支えられていた時代であった。1989年、東西冷戦は終結する。ソ連、中国、東欧諸国は独裁主義的な資本主義に移行し、西側の資本主義と経済的な体制としては対立構造はなくなった。それと同時にイデオロギーというものを消滅した。イデオロギーというものは、政治的対立構造があることによって生じたものだったということか。

 

冷戦終結後、世界は、独裁主義的資本主義国家と、民主主義的国家に、二分されてしまった。ここでも対立構造は残ったもののイデオロギーというものは存在せず、思想的な濃密なものが消えてしまった。文化や建築やデザインは、イデオロギーというこれまでそれらがよって立ってきたものがなくなることによってその方向性を見失った。こうした状況が訪れて久しい。なにに基づいて、文化や建築やデザインを動かしていけばいいのだろうか。そうした状況のもとで、環境などの身近なものをからものごとが発想されることが多くなってきた。自分も建築をデザインするときになにを頼りにして設計していけばいいか戸惑う時代が続いて生きた。

 

最近、内田樹氏の本で、内田氏の生きていく上でのモットーは、「親切にすること」だということを知った。身近で分かりやすい言葉だがなかなか深い言葉である。多くの人々がお互い親切にし合うと、多くの親切が重なり合い世の中が豊かになっていく。とてもシンプルなことだがとても豊かで深い。こうした身近だが世の中を豊かにするものをより多く見つけ出し、建築デザインをしていくことが、これからの自分の使命なのではないかと思うようになってきた。まだまだ、いろいろ先が見えない世界だが、世の中を豊かにしていくために具体的なところから論理を組み立てていきたいと思っている。