rat's eyes:脆弱なラショナリストの視点

脆弱なラショナリスト「建築家:岡村泰之」の視点

思想

思想なき国の人たちの思想

世の中は、般若心経ブームのようだ。 柳澤桂子さんと新井満さんの口語訳が売れているらしい。 キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの多くの宗教は、 ひとつの神を信仰する一神教である。 西欧の思想は、キリスト教に基づいたり、アンチという かたちでつく…

割り切れないことを抱えながら生きる

ラショナリスト・オカムラとしましては、 白黒はっきりさせて、スジを通すというのが 表向きの顔だが、実は、割り切れないものを たくさん抱えながら生きている。 そう簡単にラショナルには生きられないものだ。 というより、割り切れないものや釈然としない…

目先のことと構想と・・・、そして対話、プロセス

世の中、目先のことだけを見て動いていることが なんと多いことか。 日頃から、3年5年10年先のことを考えながらも、 具体的にものやかたちにできないプロジェクトは 意味がないと言い続けているが、 あまりに目先のことだけの付け焼刃なことが多すぎる。 少…

養老孟司VS橋本治

1/4、5の夕刊、養老孟司と橋本治の 「団塊を知らない子供たちへ」という対談。 ここのところ注目していた二人の対談である。 これもなかなかいいマッチング。 話は、養老さんの 「自分で考える人が日本では少ないんですよ。」で始まる。 つぎに「頭がいい」…

スラヴォイ・ジジェク

スロベニア(旧ユーゴスラビア)の哲学者である。 元旦の新聞に、彼のインタビュー記事を見つけた。 大まかな内容は、グローバリズムによって各国の内部に 「文化の隔離壁」が築かれ始めたというもの。 つまり、グローバル化という流れについていけたものと …

本質を見極めること、とスキルを磨くこと

仕事をしていると、同一視されがちなことでもある。 しかし、この二つは全く種類の違うものである。 スキルを磨けば、本質が見極められるわけでもなく、 本質が見極められれば、スキルが磨かれるわけでもない。 それぞれパラレルに鍛え上げなければいけない…

般若心経

先週、実家のある鳥取へ法事二つに出るために行ってきた。 その際にお坊さんがお経を唱えるときに、般若心経が 参加者に配られて、その文字に接する機会があった。 これまでも何度かそういう機会があったかもしれないが、 内容が気になるもののなにが書いて…

分類し整理すること

ものごとの全体像を把握するためには、分類し整理することが 不可欠である。 というより、分類し整理することは世界を把握することと 同義である。 生物学的には、種を分類整理することで生物学的世界を理解する ことができる。 物理学的には、諸法則を分類…

ラショナル

学生時代の研究テーマが、二大戦間のイタリアン・ラショナリズム建築 だったこともあって、建築についてはもちろん日常生活についても ラショナルなものを好む。 ラショナリズムの邦訳は「合理主義」というのが定訳となっているが、 この訳だと、アメリカの…

不安定なパラダイムの海の上で

小熊英二対談集「対話の回路」を読み進めている。 国家から個人までのそれぞれ対峙する「境界」をめぐる対談集だ。 ナショナリズムに関する話が主題であるが、個人のスタンスにも 大きくかかわる問題として語られている。 とくに、最後の喫茶店の店主でもあ…

思想はいま身の回りにある

私の学生時代は、思想の時代であった。 一世代前の全共闘世代のイデオロギーとは一線を画した フランス現代思想中心の議論がいたるところで行われていた。 学生はファッションとして「現代思想」を小脇に抱えていた。 あのときの記号論や構造主義の議論はど…

客観性という神話

私が独立したのはバブルの末期1988年であった。 友人たちはバンバン大きな仕事をこなしていたが、私には その頃あまり仕事がなかった。 そんなことで、当時はやりのリゾート法関連の建築部門の レポートの仕事を受け、日本各地のリゾート開発のレポート づく…

ガストン・バシュラール

フランスの思想家である。 火、空気、水、土という物質の四元素による想像力に関する ポエティックな思索で知られている。 いわば、物質的想像力の提唱者である。 私はもっぱら、建築にかかわる問題を構造主義やら記号論などの 形式想像力の問題として考えて…

難解な言い回し

学生時代は、各大学の中でも特定の研究室の人にしか通じない言葉が 研究室の学生の中で飛び交っていた。 おもに構造主義を中心にしたフランス現代思想用語であった。 教養課程で早々に力学や設備を切り上げ、3・4年では、設計作業を 除いては文学部哲学科の…

思考の振幅

また、昔のこと思い出してしまった。 いまの僕のこの年齢は一度過去を振り返るべき年頃なのかもしれない。 小学校高学年の頃だっただろうか、 身近にある物質、たとえば鉛筆の芯のなかの分子や原子のなかにも宇宙があり、 銀河系がありそして地球もある。さ…

神話をこわす知

かなり遅ればせながら、 「知のモラル」小林康夫/船曳建夫東京大学出版を読む。 なかでも、小熊英二さんの「神話をこわす知」は名文だ。 まず、歴史について。 「あたりまえのような話ですが、 それら歴史の本は現代の人間が書いたものだ・・・ 史料そのもの…

身体の輪郭

冬と春、春と夏、夏と秋、秋と冬、といった季節の変わり目に からだの輪郭があいまいになっていることを感じる。 まちを歩いていても、脚に伝わる重力が一定に感じられないことがある。 かなりふらふらした状態で歩かざるをえないことがあるのだ。 冬や夏に…

「しくみ」と「制度」

下北沢のとある喫茶店で出している冊子がおもしろい。 お店に来る客を見ていて、おもしろい人を見つけ出し、 そのひとと店主の今沢裕さんが対談するという形式で冊子がつくられている。 そのなかの「秘密の喫茶店」は、小熊英二さんとの対談だ。 私なりにそ…

意識的であること

先日、子供に部屋を空けてくれという妻の要望で片付けをした際に、 今までたどり着けなかった私の本棚までの道のりが通行可能になった。 そのとき、学生時代に読んだ本に目が止まった。 エドモンド・リーチ著「文化とコミュニケーション」、 山口昌男編「説…

歴史的視点について

小学校、中学校、高校、大学で教わった歴史は、 ある数人の教師の授業を除いてほとんどが退屈でつまらないものだった。 史実のみを教え、覚えることが前提の教育だったからだ。 その裏に潜む歴史を綴るものの意思、 いまを生きるために何を学ぶかについては…